「俺さ、あゆにフラれてから、仕事で失敗続きでさ」
振り返るように話す冬馬を見ながら、あたしも当時を振り返る。
…スタートラインを機に再会した、あたしと冬馬。
普通のクラスメートだと思っていた冬馬は、あたしの事がずっと好きで。
だけど、元カレの貞永への想いが消えていなかったあたしは、冬馬の告白を断った。
「今はあゆが幸せだったらそれでいいんだけど、フラれた当初は、相当引きずっててさ」
「冬馬…」
「だけど、そんなどん底に突き落とされていた時、俺は救われたんだ。―――イトコであり、自分の担当女優の、蘭に」
蘭という名前が出てきた瞬間、冬馬の表情が一気に優しいモノへと変わる。
「情けない俺に、喝を入れてくれたんだ。「アンタがそうやってオドオドしてるから、中森さんは光輝くんに心を奪われちゃったのよ…!」ってね」
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