「せっかく来たんだし、少しココに居れば?」



「じゃ、お邪魔しようかな」




せめてもの罪滅ぼし、という訳ではないけれど、あたしは冬馬をしばらくの間、控え室に招待する事にした。


テーブルを介して、あたしの向かい側のイスに座った冬馬は、ふわふわの髪の毛を揺らしながら、他愛のない話をする。


だけど、やっぱりその瞳は、どこか寂しげに見えて。



そんな冬馬を見た瞬間、あたしの心の中に、ひとつの思惑が生まれる。



―――もしかしたら、冬馬は…



“もしも”の可能性に掛けて、イチかバチか、あたしは冬馬に尋ねてみる事にした。




「冬馬、ちょっとイイ?」



「どしたの、あゆ…?」



「冬馬は…

―――蘭が、好きなの?」




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