辛そうに表情を歪めた冬馬を見て、あたしは何も言えなかった。



ハッキリ知ってるとは言えないけど、心当たりくらいはある。



冬馬が大好きな蘭。

そんな彼女の前に現われた、ハジメテを奪った男。

二人の間には、何か複雑な関係があって。



そりゃ、蘭は動揺しちゃうよね?

好きな人に嫌われたくないから、過去の事は隠したいよね?




「あたしは…何も知らない」



「そっか…。ゴメンね、あゆ」



「全然!あたしも蘭の事、気になってたから…!」




「あはは」と無理矢理笑ってみせる自分を、なんだか情けなく思う。



だけど…しょうがないよ。

いくら冬馬相手でも、言えない事くらいあるから…。




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