どうしてこう、あたしの周りにいる人達は、空気が読めないんだろう。


…いや、訂正。


空気が読めなさ過ぎるんだろう。




「じゃ中森サン。今の話は二人だけの秘密ですから」



「え…菊池!?」



「俺は便所行って来るんで。あ、サボりじゃないんで、ご心配なく」




ニッと笑みを浮かべた菊池は、あたしの返答も聞かぬまま、控え室から去っていった。


…でもやっぱり、どこか菊地は苦しそうに見えて。




「…難しいよね、人生って」



「何が?」



「へ…?」




独り言のつもりで呟いた言葉に、返事が返ってくる。


驚いたあたしが見た先には…冬馬の姿。



あ…。

すっかり、冬馬の存在、忘れてました…。




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