村に着いて俺たちを迎えてくれたのは、腰が曲がったお婆さんだった。

「ご無沙汰してます。お元気そうで何よりです。」

「ユウさんこそ大きくなって。お父さんはお元気?」

「はい。おかげさまで。あ、この子は大学の生徒で神名くんです。」

そう言われて、俺は頭を下げた。

今までの話を聞くかぎりはこのお婆さんは教授のお父さんと知り合いで、教授の小さい頃のことを知っているようだ。

「村山ヨリ子と言います。今回はよろしくね。」

お婆さんは曲がった腰をさらに曲げて頭を下げた。

「さ、周りの人に気付かれないうちに中に入りなさい。」

お婆さんに促されて俺と教授はお婆さんのうちの中に入った。

「神名くん、この村変に思わないかい?」

「え?」

そういうと、教授はレースカーテンのかかった窓の前に立って窓の外に見える建物を指差した。