「正式には明治になってからだったと思いますが。」

「正解。 まあ、武士以外は明治からだが、隠し名と言うものは皆それぞれ持っていたと言われている。」

「はぁ。」

「では、明治に苗字はどうやって決めていたと思う?」

「よくわかりません。」

教授は一枚の紙を取り出して『田中・山田』と書いた。

「一説では、自分の住んでいる場所を苗字にしたと言われている。 たんぼに囲まれている所に住んでいたから田中。 山にたんぼを持っていたから山田。」

「そうなんですか。」

「もっとひどいのは、神社やお寺に決めてもらうというもの。 それも大勢来てしまったから皆同じ苗字を与えられたなんて事もあったらしい。」

「それは、佐藤さんとか鈴木さんとかですか?」

「ご名答。」

とだけ言って椅子から立ち上がった。