卒業式の日の朝、美紀は大好きな音で目が覚めた。


窓を叩くパタパタという音。
屋根を叩くポツポツという音。



そして騒がしい携帯の着メロ。


この曲は愛しの旦那さまからの着信だ。
ってまだ旦那さまじゃないよね。


「もひもひ…。」



『おはよー。喜べ!雨だから現場休みんなった。
卒業式って何時に終わる?学校まで迎え行く。』



「本当に!?」



嬉しいニュースに飛び起きる。



いつもより念入りに身支度を整えると最高の気分で家を出た。



傘に当たる雨の音が気持ちいい。

踏むたび跳ねる水が楽しい。



「お昼にはパパに会えるよ。それまでは退屈かもしれないけど我慢してね。」



最近より目立ってきたお腹を撫でる。



卒業式は思った以上に退屈だった。

送辞とか答辞とかどうでもいいし。

美紀の頭の中はその後のことばかり。



内野美紀か…。



なんて何回も考えてはニヤニヤする。