ー白石美紀ー
上靴に書かれたその名前に微笑む。
美紀が白石でいられるのもあとわずか。
今日の卒業式の練習が終わったら次にここへ来るのは本番。
その後には内野美紀になる。
「あれ?美紀、また太った?」
失礼な言葉に振り向くとそこには恵梨香がいた。
「もぉ~。気にしてるんだから言わないでよ。」
怒りながら恵梨香の腕をバシバシ叩く。
「っていうか恵梨香どうしてたの?ケータイ通じないし。学校来ないし。みんな心配してたんだからね!!」
彼女は意味深に微笑みながら階段を上る。
恵梨香とヤマがつき合いだしたことを知るのはそれから数分後のこと。
心配して損したとみんなであきれた。
美紀も悔しいから直ちゃんのことは卒業式まで内緒にしちゃうんだ。
恵梨香たちのことは恭ちゃんも大喜びだった。
あまりにも楽しそうだったから夕里さんのことは何も聞けなかった。
きっと恭ちゃんもいろいろ悩んで苦しんでる。
いつか美紀に話してくれたら嬉しいのにな。