ビールを注ぐお父さんの手が止まった。


「は?」


目を丸くして美紀を見る。



「だから、お腹の中にいるの。赤ちゃん。」



「何言ってるんだ!?誰の子だ!!」



直ちゃん…って言いそうになって口をつぐんだ。


だって直ちゃんはまだこのことを知らない。
産むって決めたのは美紀。



「美紀の子だよ。誰の子でもない。美紀の子。」


しっかりお父さんの目を見る。


「何言われても産むから。美紀、産むって決めたから。」



「産むって…。お前まだ高校生だろ。」



「学校なんてやめる。いい加減な意味じゃなくて、美紀だって卒業したいよ。でもこの子の為なら学校なんて必要ないの。」



「金だってないくせに。」



「わかってるよ。それはどうにかする。ほら、美紀女だし?稼ごうと思ったらいくらでも方法があるもん。」




何もかも本音。そして本気。



この子は絶対産みたいの。
その為なら高校中退だってかまわない。
キャバ嬢でも風俗でもなんでもやる。



そんな気持ちをぶつけるようにお父さんを見つめた。