恭ちゃんは黙ったまま、しばらく夕里さんの座っていた場所を見つめていた。
「もうすぐ7時だけど…。待ち合わせ大丈夫?」
「ん。へーき。相手、夕里だったから。」
あぁ…、美紀ってすぐ余計なこと言っちゃうんだよなぁ。
恭ちゃんは立ち上がると美紀の向かいに腰を下ろした。
「一応さ、つき合ってたんだ。俺と夕里。」
窓の外を見たまま話し出す。
「先に好きになったのは俺で、ダメだって思ったんだけど。無理だってわかってたんだけど。夕里に告られてさ。」
それは、いつものふざけた恭ちゃんじゃなかった。
「でも親にばれた。母さんに泣かれて、オヤジに殴られて、叔父さんと叔母さんに嫌われた。」
「いとこ同士は結婚できるんだよね?」
ない頭をフル回転させて考えた。
「法律上はな。
だけど実際は無理。道徳的問題っていうの?お互いの親が許すわけないんだ。」
「でも…、」
「俺たちだって考えたよ。二人の気持ちさえしっかりしてれば平気だって。
でも無理なものは無理。俺をここまで育ててくれたのは誰だと思う?…裏切れない。俺には。」
美紀の頭にお父さんとお母さんの顔が浮かんだ。