暗闇の奥で美紀に手をふる人がいた。



「直ちゃん?」



なんで…?


さっきから疑問ばっかり。



『そんなトコつっ立ってないで早く来いよ。』



「何してるの?」



足が地面に縫いつけられたように動けなかった。



『恭ちゃんってヤツ見ようと思って。』



「何のために?」



『美紀ちゃんの男のツラくらい拝ませてよ。』



なんでそんなに面白そうに笑うの?



結局、直ちゃんはいつまでたっても“お兄ちゃん”ってこと?




『そんなことどーでもいいから早くこっち来い。』




無理だよ。これ以上近寄ったら美紀の表情が見えるもん。