「ごめん!恭ちゃん!
美紀帰らないと。用事できちゃった。」
「あー、そう。
ならあいつらには俺から連絡しとく。とりあえずこっから抜けるか。」
美紀たちの周りは人だらけだった。
花火を観終わったお客さんたちは一斉に会場から出ようとしている。
なかなか前に進めない。
道の左右に並ぶ屋台にできた行列が余計に状況を悪化させる。
はぁ…。早く直ちゃん家行きたいよぉ。
ここからだと歩いても行ける距離だからいいけど。
「何?」
恭ちゃんが振り返る。
あ…。無意識に恭ちゃんの服掴んでた。
「人いっぱいいて迷子になりそうなんだもん。」
「ちっこいと大変だな。」
バカにしたように美紀の頭を叩く。
「恭一?」
恭ちゃんの表情がなくなるのと同時に聞こえたのは透き通るようなキレイな声だった。