美紀は恵梨香が心配で、もちろんヤマのことも心配だけど。
恭ちゃんは恭ちゃんでヤマのことが心配で、きっと恵梨香のことも心配だろうけど。
でもこれは恵梨香とヤマの問題だから美紀たちにできる事はない。
何もしないことが一番いい。…だけど何もできないことが悔しい。
「ま、俺たちが何か言ってどうこうなる問題でもないしな。
そっと見守る?」
なーんだ。恭ちゃんも美紀と同じ考えか。
「そだね。そのかわり何かあったら全力で助けてあげようね!」
「だけどあの意気地のねぇ男にはひとこと言ってやりてーわ。」
「確かに。美紀もあの独りよがりの女にひとこと言ってやろうかな。」
美紀と恭ちゃんはいたずらっ子のように笑った。
もしヤマが恵梨香のことを好きなら、もし恵梨香がヤマのことを好きなら、こんなに羨ましいことはない。
好きな人がすぐそばにいて、毎日会えて、障害なんて一つもない。
二人を見ているのはもどかしくて、怒りすら湧いてくる。
なんかもう、余裕なくなってきたなぁ。