そして、もうすぐ5年生になるという3月。


美紀はいつものように直お兄ちゃんと登校していた。



「美紀ちゃんと学校行くのも今日で終わりだね。」



直お兄ちゃんがニコニコと言う。



「俺、明日卒業式だから。」



「もう一緒に行けないの?」



「だって小学生と中学生じゃ学校に行く時間が違うだろ?」



直お兄ちゃんは美紀と一緒に行けなくても淋しくないの?



「美紀ちゃんももう一人で行けるよな?」




行けるけど…行きたくないよ。




「じゃーな!」



美紀を置いていかないでよ。




教室も怖くない、意地悪してくる子もいない。



だけど、だけどお友達はまだできないんだよ。



美紀はいつも一人ぼっちなんだよ。



直お兄ちゃんがいなくなったら本当に一人ぼっちになっちゃうんだよ。






その声は直お兄ちゃんには届かなかった。