それでも佐山は顔色ひとつ変えないで、むしろまた呆れたみたいにフと息を抜く。


「くだんね」



綺麗なラインを描く横顔にスッと出た喉のあたりが男らしい。


「くだらなくない、そういうのって重要だと思う」


あたしはキツく言ってやった。


「おまえが」


ふと足を止めた佐山。


「なに?」


「迷惑?」


「は?」


「迷惑なわけ?」


佐山はあたしを真っ直ぐ見つめる。正直、佐山の事好きなんじゃないかとか言われるし、クラスの違う佐山の彼女とすれ違う度、妙に視線を感じるし、迷惑だ、って言えばいいのに、



「迷惑、っていうか」


「なんだ?」


「普通に、」



やだ、もう、佐山が妙に、マジメに見つめるから調子狂う。何だか、その表情が妙に寂しそう、とかあたしの勘違いが痛い。