一歩、二歩、三歩、


何歩あるいたかなんて数えてた訳じゃないけど、次の瞬間はスローモーションみたいだった。






「宮澤、つーか、待て」



だって、いつもは聞かない妙に焦った声と掴まれた腕にリアルを感じなかったから。



ただ反射で振り向いた後ろに、佐山が立ってた。


「おまえ、まじ」


佐山はそこで言葉を止めてもう片方の手で顔を覆う。それから深いため息。



「…馬鹿はどっちだよ、阿呆」




佐山がそう言葉を続けて、あたしは次の瞬間には、




佐山の腕の中にいた。