謁見の間に入ったときにフードをはずした彼女は、不思議な色合いの角や獣のような耳を晒したままである。
 しかし、黄金の瞳にはいつもの生彩は見られない。耳も心なし垂れているようで、どことなく疲れの色がある。
 煙管を燻らせながらほっと息をつき、黙ってしまった一同を見回す。
 自分をまじまじと見る森の民の見慣れない顔を認め、自己紹介をする。

「雷電の民、クラウンや」

 と、今度はアウルは自分からなぜか嬉々として挨拶をする。

「森の民のアウルです」
「よろしゅうに」
「よろしくお願いします」

 アウルは差し出された手を両手で包む込むように握ってぶんぶんと縦に振る。
 どうやらアウルいわくのきれいなお姉さんの範疇にはまったらしい。
 サハナは深々とため息をつく。
 辟易としたふうに自分の手を取り戻すと、クラウンはサハナに黄金の眼をむける。

「そっちのお嬢はんは?」
「あっ、サハナです。アウルのお目付け役です」

 クラウンは首をかしげ、アウルとサハナを見比べ、ついでサレンスとレジィを見る。
 雷電の民の黄金の瞳にこの二組がどう映ったのか、ぽつりとつぶやく。

「なるほどな」

 それをサレンスが聞きとがめる。

「何が、なるほどなんだ?」
「似た境遇のもん同士がそろったんやなあ」

 しみじみとクラウンが言う。

「そうか?」

 サレンスは怪訝げに首を傾げ、アウルとサハナも似たような反応だ。
 ただレジィの視線だけが横に泳いでいる。少年は奔放なアウルとそれを制御しようとしてしきれないサハナに自分とサレンスを重ねていた。

「それより説教は終わったのか。ずいぶん長かったが」
「誰のせいや」

 クラウンは恨みがましい視線をサレンスに投げかけるも、あっさりと返される。

「君だろう」
「そうやったかいな」

 すっ呆けるクラウン。どうやら彼らの遅刻の原因は彼女のほうにもあったらしい。

「で、説教の主はどうした? 挨拶をしたかったんだが」
「クロはんか? 先に行くそうや」
「では後で会えるな」
「せやな」

 気安く会話を交わす二人の様子にサハナは胸のもやもやを禁じえない。