「サハナさん、騙されてはいけませんよ。サレンス様は顔だけはいいけれど、自分では何にもできない手のかかる人で、その上女好きなんです」

 いつもの容赦ないレジィの言葉である。しかし、それに今度は援軍が着いた。
 何だかんだ言いつつも、アウルもやっぱり年下の幼馴染が心配だったのだろう。

「そうだ、サハナ。こんな顔だけ男に騙されるな」

 しかし、その気持ちは当の幼馴染には伝わらない。

「アウルたら、いくらサレンスさんの顔がきれいだからって、なんでそんなに食って掛かるの? 失礼にもほどがあるわ」

 と反撃を食らう。
 しかしアウルも負けてはいない。

「お目付け役のお前が男に転んでどうするんだよっ!」
「転んでないわよっ! アウルがしっかりしないからいけないんでしょうっ!」
「俺はしっかりしているだろうっ!」
「どこがよっ!」

 もはや痴話げんかである。
 さすがにアウルの直截な言葉と微妙に失礼なサハナの言葉の両方に傷ついたのか、サレンスは隣のレジィに問う。

「やっぱり、私は顔だけ男か?」
「今頃、わかったんですか」

 返すレジィの言葉はあくまで手厳しい。

「そうか」
 
 がっくりと項垂れてみせるサレンス。
 そこに声がかかった。

「なん騒どるん? えらい楽しそうやな」

 雷電の民クラウンの登場である。