バイクを停め
メットを置いたあたしは、すぐさま団地の階段へ走った。
「あ、ちょっと!ミーコちゃん!」
西くんの声に立ち止まることもなく、一気に階段を駆け上がる。
逸る気持ちとは裏腹に、心臓はうるさいくらい騒がしい。
やっと上り切った時には、すっかり呼吸が乱れていた。
それでも気持ちを落ち着かせ、震える手で鉄の扉を叩く。
コンコン、コンコン。
「ミチルくん!」
お願い、出て来て…っ!
コンコン、コンコン。
「ミチルくん、あたしです!ミーコです!」
インターフォンがないせいか、扉を叩く手に段々力が入ってしまう。
でも反応はなくて。
「ミチルくん…っ!」
諦めにも似た気持ちで、ひたすら扉に呼び掛けていたその時。
ガチャン、と音とともに開かれた扉。
そして―――。
「ミチルくんっ!」
久しぶりに見た、その姿に胸が熱くなった。