あたしが必死で隠そうとしてた不安を、彼はすぐに汲み取ってくれる。
「本当は一人じゃ心細いくせに。」
ポン、と頭に置かれた手のひらは温かくて。
「行こ!」
そう言われた瞬間
不覚にも涙が出そうになった。
でも、勘づかれないようにあたしは笑う。
「…うんっ!」
そして、西くんと二人走り出した。
「行ってらっしゃーいっ!」
あったかい、みんなの声を背中に聞いて。
「時間がないから。」
と言われ、西くんがあたしに見せたのは
学校から少し離れた公園の隅に置かれた、ピカピカのバイク。
4月生まれの西くんは、高校に入ってすぐ単車の免許を取ったらしい。
一瞬迷ったけれど
西くんが言うように確かに時間がない。
「内緒ね?」
と人差し指を口元にあて言う西くんに黙って頷き、初めてのバイクに跨る。
風を切るように街を走り抜けてゆくバイク。
西くんの肩越しに見える景色を眺めながら、あたしはずっと願っていた。
ミチルくんが来てくれますように、と。