勝手に勘違いしてた。
完全にあたしの思い込みだった。
これは俗に言う、“デート”なんだろうな、と。
でも、普通思うじゃん!
あれだけみんなに
けしかけられて、しかも相合傘なんかしちゃったら!
…そう思いません?
「ここ!ここがエースん家だよ!」
西くんに連れて来られたのは、ズラリと並ぶ集合住宅。
いわゆる、団地だった。
地面を濡らしていた雨は、着いた頃にはあがっていて。
傘を閉じたあたしは4階建てのそれを見上げ、ぽつりと呟いた。
「ここが…?」
「うん!この棟の4階!」
チラシが溢れたポスト。
古い三輪車に、町内会のお知らせが貼り出された掲示板。
「んじゃ、行こ!」
ちなみにエレベーターはないからね!と西くんは階段を勢いよく駆け上がってゆく。
「あっ、ま、待って!」
迷う暇も余裕もなく、そんな西くんを追い掛けた。
そして薄汚れた階段を上がり
重たそうな鉄の扉が開いた瞬間、顔を覗かせた某エース。
「何でおめーが居るんだよ。」
…もとい、ミチルくん。
眉を吊り上げ、あたしを睨むその態度はまさに予想通りの反応で。
ここへ来てしまったことに、あたしは早くも後悔した。