「あ、ミーコちゃんっ!」

「んぎゃっ!」


トイレに行くべく
明日香ちゃんと教室から出ると、タイミングよく西くんと出くわした。


さっきまで話題の中心人物だった相手に鉢合わせたあたしは

微塵も色気のない声を出し、驚いてしまった。


それこそ、尻尾を踏まれたネコのような声で。

まさに“ネコ踏んじゃった”状態。



「あはは!何そのネコみたいな声!」

しかも考えてることが一緒ときたものだ。


「え、えへへ…、」


誤魔化すように苦笑いを返せば、西くんは爽やかスマイルであたしを見下ろして言う。


「ちょうどよかった、俺ミーコちゃんに用があったんだよね。」

「あっ、あたしに?」


その言葉に、何だか嫌な予感がした。

すると周りの目を気にする様子もなく、西くんは至って普通に問い掛けてくる。



「今日、放課後ヒマ?」

「え!?きょ、今日!?」

「うん!ちょっと付き合って欲しいところがあるんだよね~。」


瞬時に都合のいい断り方を考えてみる。

でも、あたしにそんな器用なこと出来るはずもなく。


「今日は、ちょっと…、」

と口ごもった瞬間。



「もちろんヒマです!」


そう答えたのは、何故か明日香ちゃんだった。