別に隠してた訳じゃない。
言おうかな、とも思ってたし。
ただ、言うタイミングがなかったって言うか…。
「そんなの言い訳にならーんっ!」
鬼のように眉を吊り上げるみんなに、あたしはすっかり身を縮こまらせる。
3人に引きずられ、連れて来られた女子トイレ。
傍から見たら、完全にイジメっ子とイジメられっ子だ。
「いい?ミチルくんって言ったら、みんなの憧れなの!」
「王子様なのっ!ヒナにとってはね!」
「プリンス、とも呼ばれてるよね。」
彼氏持ちであるちづちゃんだけ、少し落ち着いていて。
「なのに、何ですっかり仲良くなっちゃってんのよっ!」
「そうよ!ヒナにも紹介しなさいよぉ!」
だけど、明日香ちゃんとヒナちゃんは完全に壊れてる。
あたしはちづちゃんの後ろに身を隠し
「別に仲いいって訳じゃ…、」
と小さな声で呟いた。
だって実際に、あたしがミチルくんと喋ったのは
初めて会った時と、この前授業をサボった時の2回だけ。
それのどこが、“仲いい”と言えるんだろうか。
そんなあたしに、ヒナちゃんが言う。
「てゆーか、西くんはどうしたのよ!」
「え?」
何でここで西くんが出て来るの?