「つーか、西遅ぇな。」


それから10分後。
ミチルくんの言った通り、西くんは未だ姿を見せない。

暇を持て余したあたしが
木の枝で遊んでいると、背後に聞こえた豪快なくしゃみ。


「ぶえくっしょい!」


…もちろん、ミチルくんだ。



「だ、大丈夫ですか…?」

そう問い掛けた直後、またしてもくしゃみ連発のミチルくん。


「ちょ、ちょっと待ってて下さい!」


このままじゃ風邪ひいちゃう、と思ったあたしは

「西くん、探して来ます!」

と立ち上がる。


…が。



「おい!」

一歩踏み出したのと同時に、ミチルくんに呼び止められてしまった。



「今戻ったらセンコーに見つかるだろ。」

「そうですけど…、」

「俺は平気だ。大したことじゃねぇ。」


そう言いつつも、ミチルくんは鼻をグズグズと鳴らす。


いくら夏が近いとは言え、今はまだ6月になったばかり。

強がって見せていても、本当はすごく寒いはずだ。


しかもこうなったのはあたしのせいな訳で。


「…じゃあ、せめてこれ…掛けてて下さい。」


いたたまれなくなったあたしは、自分の制服の上着を差し出した。