そんな束の間の幸せを味わっていると
「みぃこ~!」
と頭上から声が降ってきた。
“みぃこ”っていうのは、あたしのアダ名。
ちょっとネコみたいだけど、みんなそう呼んでくれるから、実は気に入ってたりもする。
花壇からその声のするベランダへ顔を向けると、明日香ちゃんが声を張り上げて言った。
「もう授業始まるよ!しかも移動!」
「ええっ!?もうそんな時間!?」
「早くしないと置いてくよー。」
「わああ!ま、待って待ってーっ!」
慌ててホースを元の場所に戻し、昇降口に走り出す。
あたしのお昼休みは、いつもこんな感じだ。
みんなでお昼ご飯を食べた後、花壇に水をあげ、ギリギリで教室に行って授業を受ける。
そんなあたしに、明日香ちゃんは呆れたように笑って言った。
「また花壇に水あげに行ってたの?」
明日香(アスカ)ちゃんは、この高校に入って出来た一番のお友達で。
見た目は派手だけど
ちょっと姉御肌っぽいところが、みんなから信頼を集めてる。
「そんなの断っちゃえばいいのにー。」
と鏡を見ながら呟いたのは、今日もお化粧バッチリのヒナちゃん。
ヒナちゃんはあたしたちの中で誰よりもミーハーで、かつ男性経験豊富。
今まで付き合った人は数知れず、なんて噂もある。
「でも、断らずに毎日欠かさないみぃこは偉いよ。」
結局いつもこんなあたしを庇ってくれるのは
おっとりとした雰囲気が可愛い千鶴(チヅル)、通称ちづちゃんだ。
みんなあたしの大好きなお友達。
あたしたちは、こんな感じでいつも4人で行動してる。