色とりどりの花が、花壇を埋める。
柔らかな風はあたしの頬を撫で、優しく過ぎていった。
どことなく夏を感じる、春の終わり。
ホースに繋がった蛇口の水を捻って、ぐっと伸びをした。
「んーっ!」
よっし、終わり!
ふう、と一息つき
もう一度花壇に目を向ける。
十分に水を浴びた花々は、太陽の光を反射させながらキラキラと輝いていた。
誰が決めた訳じゃない。
だけど園芸部の先生に
『ちょっと水あげてくれない?』と頼まれてから、花壇の水やりはあたしの日課になってしまった。
この高校に入学してから約2ヶ月。
寂しかった花壇には、様々な種類の花が咲き誇っている。
それを見ていると、ちょっぴり幸せなキモチになるのは
あたしだけなのかな?
「キレーだなぁ~っ。」
花壇の前で頬杖をつき、花を眺める。
望月 深子(モチヅキ ミコ)
この4月に高校1年生になったばかり。
人は、あたしをこう呼ぶ。
『天然』
または『どこか抜けてる』と。