「じょ、女性恐怖症…?」
その日の放課後。
あたしは何故か西くんと一緒に帰っていた。
と言っても、帰ろうとしたら西くんが昇降口で待っていて。
「ちょっといい?」なんて言われ、今に至るって訳。
「そう。エースは女性恐怖症なんだ。あ、でも別にホモって訳じゃなくて!」
女の子は好きなんだけどねー、と西くんは茶髪を揺らして呟く。
…ていうか、何これ。
何だか、周りの目がすんごーく痛いんですけれど。
ヒソヒソ、コソコソ。
周りから注がれる視線は、決して優しいモノじゃなく。
「何かね、姉貴のせいみたいだよ?」
「…お、お姉さん?」
「そう。エースのおねーさん。」
そんなこと、気にも留める様子もない西くんは続けた。
「エースの家、ちょっと複雑でね。両親が居ないんだ。で、その年の離れた姉ちゃんがエースを育てたらしいよ。」
「へ、へえ。」
「またそのねーちゃんが強烈でさぁ!」
そんな話、あたしにしちゃってもいいのかなぁ?
「まぁ、確かにエースはかっこいいからね。身内にも好かれるよなぁ。」
うんうん、と頷く西くんにあたしは人知れず溜め息を吐き出す。
あああ。
早く帰りたい~っ!