今にも泡を吹いて失神してしまいそう。
だ、だって!
この人が“ミチルくん”だなんてーっ!!!
そんなあたしに、西くんは目の前で手を振る。
「おーい?大丈夫?」
「だ、だだだだだ大丈夫ですっ!」
「あ、もしかして知らなかった?」
…ええ、顔は存じ上げませんでした。
噂なら嫌ってくらい聞いてますけれど!
すると再び
「おい、お前。」と呼ばれ、あたしは怯えた視線を野崎さん…
いや、“ミチルくん”に投げた。
眼光をギラつかせ、高い位置であたしを見下ろす噂の彼、ミチルくん。
「このこと誰かに言ってみろ。」
「は、はい…?」
「ただじゃおかねーぞ!」
寅年に相応しく。
雄叫びをあげた彼は、メッシュの入った髪を揺らし悪魔のような笑顔を浮かべた。
「わかったか、みぃこ!」
「は、はいぃぃぃぃぃっ!」
こうして、あたしはミチルくんとの初対面を果たした。
こんな最悪な形で。
…ていうか、すみません。
“このこと”とは一体、何のことなんでしょうか?