階段を降りて、玄関でスニーカーを履いてると母親があたしの後ろにきた。


「愛未、今日もママ帰らないよ」
「うん。まなも帰らないよ」


あたしはじっと、靴紐を結ぶ自分の手を見ていた。

「そ。ならいいわ。」


軽くそう言って、甘ったるい香水の匂いを残してリビングに戻っていった。