「家どの変?」

「・・・・・瀬田川の近く。」

「じゃとりあえず瀬田川まで行くよ?」

「うん。」



家の場所を簡単に説明すると特に話すこともなく、愛未は助手席の窓から外のネオンを眺めていた。


「あ・・・・これ浜崎あゆみ?」

「ああ、綾香が好きでさ。ずっとこの車にMDのったままなんだよね。」

「ふ~ん。まなもあゆ好きだよ。」

「あ~、だから源氏名『あゆ』なんだ。」

「まあ、ね。」


この時流れていた曲は愛未も良く聴く曲だ。チラッと運転する稲垣の方を盗み見した。



ふーん・・・なかなかイケメンじゃん。




「ねぇ、愛未ちゃんの家ってどんな感じ?」

「家庭?」

「うん。」


愛未は稲垣から視線を外して夜景に目をやった。


「サイテーな家だよ。」

「・・・・なんで?」

「うーん。昔は良い家だったと思うけど、アイツが家を出てからおかしくなったのかも。まな、こんなんだし両親が離婚した後、母親どんどん崩れてくし今じゃ水商売で家は成り立ってんの、笑っちゃうよね。母親も娘も水商売。ま、本当のこと言うと、あんたの家に泊まる理由も嘘なんだけどね。」

「知ってたよ。」

「・・・・あぁ、そう。・・・・アイツが今帰って来ててさ。ちょっと・・・・まあ、いろいろあったから帰り辛かっただけだから。」

「熱が出るくらい苦しむなんて普通じゃない。」


急に真面目な声になった稲垣。驚いて稲垣の方を向く。


「あ・・・もうここでいいよ、降ろして。」

「そっか・・・・あのさ、これ・・・」


そう言って稲垣は財布からレシートを取りだして、ボールペンで何かを書いて愛未に渡した。