ぴたりと足を止めて、桑田さんを振り返る。


両親に何年も会っていない俺のことを、桑田さんは気にしているのだろう。

ただでさえ、俺は桑田さんの子供と同い年なのだ。




「…気遣い、ありがとうございます」


今はそれ以上に何も言えなかった。

再び頭を下げて、今度こそ扉をくぐる。ちらりと秘書と目が合い、一礼される。




「今日は早く終わる日なんです」