「朝早くからすまなかったね、ユキ」 「いえ、…例の物、持ってきました」 「あぁ、そこに置いてくれ」 わずかな隙もないような、完璧すぎる笑顔を崩すことなく、桑田さんは俺から視線をそらし、窓の外を見つめていた。 視線はたしかにそらされているのに、向けられている背中からずっしりと威圧感を感じる。 …桑田さんに直接組に誘われた身である俺でも、桑田さんは警戒心をほとんど解かない。 いや、そう感じるだけなのかもしれないが。