『ねぇ!黒い車?』
私が聞くと
『そうそう!』とダンナさんが笑いながら言った
コーキだ!
黒い車!
携帯を持ち急いで部屋から出た
私がエレベーターにいる間に杏里の部屋で
『でもさ、カレンちゃんの彼氏って金髪?』
『えー?
どうして?』
『いま金髪の男が車に乗り込んだけど…』
なんて会話がされていた事を、
私は知らなかった
エレベーターから降り外へと急いだ
早く、早く会いたい。
不安な気持ちをコーキに会って無くしたい。
見えた黒い車に乗っている人物もろくに見ず
ただ走って近づいた
車のドアを開け見えた運転席には
『コーキ…じゃない…』
愛しいヒトではない
知っている人がいた
薄ら笑いを浮かべ、固まる私の腕を力強く引っ張り
彼はキスをした
『久しぶり、会いたかったよ香玲』
私の腕を痛いくらいに握りしめながら
抱きしめた
この温もりは欲しくない。
『離して!』
力強く押しのけ
車から降りようとしたら頭を殴られ気を失った
彼と私の再会はひどく暴力的だった
『どうして…こんな…』
重たい空気が流れ
ただ、心配が増す
カレンがいない
異常に気づいた時にはカレンはいなかったらしく、
202号室に行こうとした俺を
杏里さんと悠さんは寒い中、外で待っていた
ただ、申し訳ないが
カレンが心配で落ち着けない。
『でも…車全く同じだった…
あれじゃ、カレンちゃん乗っちゃうはずだ。』
悠さんが頭を抱え呟いた。
万里子ちゃんに確認してもカレンは来ていないらしく、
もう、場所が思いつかない
杏里さんはいとこだから俺より場所が思いつくらしく、
さっきから色々な人に電話をかけ続けている
ただ、お願いだから
無事でいてくれ…-
『カレンちゃん!カレンちゃんは!?』
入り口が豪快に開き
荒い息をしながら部屋に入ってきたのは
綺麗な大人の女性
誰だろうと考えていると
杏里さんが呟いた
『香織さん…』
『杏里ちゃん…!』
香織さんという人は力無く倒れ込み杏里さんに支えられた
気のせいか、
細い体も綺麗な顔立ちもカレンに似ている
『コーキくん…
香織さんはね、カレンのお母さん』
なるほど…
だから似ているのか。
『あ、はじめまして…』
名刺を差し出すと香織さんは明らかに誰だろうという顔をした
『カレンとお付き合いさせていただいてます』
改めて言うと香織さんは
『あぁ…』と呟き立ち上がった
『あなたがカレンちゃんに家族の温もりを教えた方…?』
『家族の温もり…?』
『えぇ…
カレンちゃんが私の元恋人の自宅に来たとき言ったのよ
あなたのおかげだったのね‥
あの子、愛を知ったようで強くなった』
『強くなった…?』
『そうなの
カレンちゃん強がりで本当は人一倍弱いのよ。
そばにいる事はあんまりなくて…
私…あの子に嫌われたけど…
私にはカレンちゃんしかいないのよ‥
一人になって気づいたけど…
ただ血を分けた娘なのは違いないわ…』
やっぱり親心とはそんなものだな。
子供はいくつになろうと大切であり可愛いんだ
それからも香織さんは涙を流しながら
『もっと大切にしてあげれば良かった…』とか
『母親らしい事してあげれば良かった…』とか
カレンへの後悔を言っていた
♪♪♪~♪~
『あ‥ちょっと出てきます』
軽く頭を下げ鳴り響く携帯を持ちながらリビングから出た
玄関で電話に出ると深刻そうな有紗の声がした
『コーキ‥カレンちゃんいた?』
『いないんだよ』
『そう‥』
さっき、電話をし兄貴はカレンを探し周り
有紗にはマンションで待ってもらっている
『ねぇ、原因は‥もしかしたら‥』
『原因?』
有紗が勘は鋭い方では無かったはずだ‥
あまり期待をせず、有紗の意見を聞いた