好き好き
愛してる愛してる
気持ちは溢れるけど
越えられない壁も
言えない事も
まだ残ったまま。
温かい手の温もりも
風で香る匂いも
全て夢なら
もういらない
だけど夢じゃない
だって
『好き』
言葉に出せば
『俺も』
あなたの声が愛の言葉をくれる
独り言じゃない
夢じゃない
現実だ
車から降り
マンションを見上げる
久しぶりだ‥
甘い思い出が
私のコーキへの想いが
つまった場所
変わらないね
マンションは
そして変わったのは私たち
愛し合ってる
あの頃の名前さえ分からない関係などない
名前など無いから
分からないから
成り立ったそんな私たちの関係
でも、やっぱり切なくて。
寂しくて。
ちゃんとした名前がない関係など
曖昧で簡単に別れが訪れる
別れは出会いの始まりだと言うけれど
それは幸せな別れでしょ?
コーキとの別れは幸せじゃなかったよ
なら、やっぱり私とコーキとの別れは出会いの始まりなんかじゃない
そう思うの
『カレン行くぞ』
『うん』
私の手を握り部屋へと進む
久しぶりの壁にエレベーター
全てが久しぶりで
なのに全てちゃんと覚えている
記憶の奥底
だけど引き出せばすぐ思い出す場所にコーキとの思い出は閉まってあった
簡単に引き出せないように奥底にためて
でも、寂しい時や辛い時に思い出されるようにドアを軽く閉めておいたの
『テディベア忘れちゃった。』
『ん?』
エレベーターの中で私の手を握りながら私を見る
『テディベア‥
愛衣ちゃんとお揃いの‥
忘れちゃったよ‥』
テディベア持ってきたかった
あのテディベアが無いと眠れないよ
愛衣ちゃんの可愛い笑顔も有紗さんの優しい笑顔も洋樹さんの温かい眼差しも
あのテディベアに詰まってるんだよ
そして私のコーキへの想いも
『そんなにテディベアが無いとダメか?』
コーキが私に顔を近づけ問いかける
『無いとムリだよ。
私、眠れないよ‥』
あのテディベアと一緒に一人の日々を過ごした
パパと唯さんに子供ができたと知った日も
居場所がないと実感した日も
万里子という友達を心から大切だと感じた日も
嬉しいも悲しいも寂しいも
私の感情を私の気持ちを
あのテディベアは全て知ってる