『きっと…』
コーキに出会ったから。そう言おうとしたけれど
照れくさくて躊躇した。
『きっと…何?』
『何でもない。
大人になったからじゃないかなって。』
『ふーん。女子高生がねぇー言うなぁカレン』
二人で微笑した。
『しかし、お前怒ってないのか?』
『怒る…?』
『だって色々あっただろ、俺ら』
゛色々あった″
確かに、私たちは色々あった。
でも、怒るのも面倒くさいし
暴力的に連れ去ったのに自由にさせてくれる稜に
昔の事で怒る気にならなかった。
『今も昔も俺にはお前だけ
だけど。
お前は俺より遥かに大切なものや人で溢れている。
だろ、カレン?』
妙な雰囲気がだだっ広い部屋の中を支配する
きっと、普通なら私たちの再会の雰囲気など
今のように妙なものだったはず。
なのに、私たちの雰囲気は比較的和やかだった、
だから、昔は当たり前だった
稜の怒った時だけ明らかに低くなる声も
私たちの確執も
やっと現実味が出てこようとしていた。
『お前のそのピアスも
好きな男の車を見つけてマンションから幸せそうに走ってきた姿も
何よりも
カレンの心がカレンが俺を見てさえいない』
頭を抱え倒れ込んだ稜に
もう昔のように『ごめんね、私が全て悪いの』と言って抱きしめる事も何も出来ない。
出来るのは、
『稜は今も昔も私の大切な゛友達″だよ』
励ましという哀れみを口にする事だけ。
すると私の言葉を聞いた稜は
ただ一点を逸らす事なく見つめた。
私の耳に光る『K』のピアスを。
きっと、稜は知っている。
カレンのKではなくコーキのKだと。
カタンっ‥
目の前にあるガラスのテーブルにピアスを置いた
『何で?』
稜は腕を組みながら聞いた
『え?』
『それ大切なピアスなんだろ?
何で外す?』
KYはまさに私の事を言うのかもしれない。
この後の言葉は最低な発言だった‥
『どうせ外されるならジブンで外したかった』
稜はただ寂しそうに
『俺はどんだけ悪人なんだよ。』
呟いた。
そして私に近づいて優しく抱きしめて
キスをした
拒否なんか出来ず
何もない場所へと堕ちてゆく
次第に激しくなるキスに
互いに背中に腕を回して
応えあう
舌を絡めて腕を絡めて
髪に触れて
床に崩れる
背中に回されていた男らしい腕は
目に触れて唇に触れて
体へと下がっていく
体を隠す服もなくなって生まれたままの姿が露わになる
ただ優しくて‥
触れる指が唇が優しくて拒否できなかった。
ただ、もう体を重ねるのはコーキだけだと思っていた。
゛コーキ、どうか私を止めて
ダメだろってカレンを抱くのは俺だろって怒って
私の好きな低い声で怒って‥
そしたら、私はあなたに抱かれたい
大好きなコーキの香りを温もりを感じたい
愛を教えて。
体に‥心に″
あぁ‥きっと人間は弱い。
稜に触れられて拒否しない私は受け止める私はコーキに合わす顔もない。
愛してる‥
ただ、本当に。
でも、体に触れる人は
コーキじゃない
耳にKのピアスがない、コーキがいない
温もりがない…
『大切にする』
久しぶりに再会した時に言ってくれた。
『結婚しよう』
こんな高校生の私に将来を約束してくれた。
私は何をしているんだろう-
こんな風に汚れていく私にコーキは
またプロポーズしてくれる?
また好きって言ってくれる?
きっと、言ってくれるコーキなら‥
でも、きっとそんなプロポーズや愛に意味はない
耳に触れてピアスがない事を改めて感じる
バカみたいな同情のセックスに何の意味もない。
けれど、意味を探すとしたのなら
結局は『偽り』でしかない。
やっぱり、私が抱かれたいのは‥
『コーキがいい!』
稜を押しのけてフラフラと立ち上がった
やっぱりバランスを崩して床に倒れてしまうんだけど
でも、どうやら最後まではしてしていない
もう、終わりだと感じた
稜に殴られる決心などついた上での行動なのだから。
でも、稜はゆっくり私に近づいて抱きしめた
裸の体に腕が絡まる
最低なのは
稜じゃない、私だ‥
私が最低なんだ。
『稜、好きだったよ。
現在進行形ではないけど
大切だった‥』
ギュッと抱きしめた。
体を交えるだけが愛じゃない。
現に私とコーキはいつもセックスをしなくてもお互い好きでいれた。
言葉だけの愛は存在する。
それが恋としての愛ではなく
友としての愛でも存在する。
絶対に。
『もうさ‥嫌われてるのかと思った‥』
ギュッと抱きしめる力が強くなる腕が本当に弱々しくて…
切なくて…
私たちは長い間抱きしめあっていた。。。