高音の金きり声にも似た音が耳を打つ。

その声にディーノはため息を吐いた。


「太陽(ファーザー)も苛立っているらしい」


傍で控えるファルスは黙して頭を下げる。

太陽も月も
怒りに震えていた。

昼を守り
夜を愛でる両親の心中を想えば
一刻も早く事態を収拾せねばならないことを
ディーノは痛いくらい分かっていた。


昼と夜。


その均衡が破られる事があってはならない。


夜を支配する血族の王として
それは絶対に避けねばならない。


そのために母体を破壊しなければ――


しかし、卵を産み落とし続けている母体を
いまだディーノは見つけられずにいた。


「待っていろ、リザネロ」


ギリッと強く唇を噛みしめて
ディーノは小さく呟いた。


宿敵である母体の名を
ただ静かにディーノは呟いたのだった。