「あの…これから1年間よろしくね?」
見上げるとあの子が立っていた。
なんで…?
長い髪を耳にかけながら彼女はにこっと笑った。
「私、杉本 彩香[スギモト アヤカ]。よろしくね。」
そう言って彼女は俺のほうに手を出してきた。
「俺は音本 想也。よろしく。」
俺もそう挨拶してから彼女の手を握ろうとすると
別な手も彼女のほうへと伸びてきた。
「へー!君も杉本って言うの!?俺もー!よろしくな。」
龍が彼女の手を握ろうとした瞬間。
俺の手は勝手に動いて、龍の握手しようとする手を止めていた。
「想也…なした?」
「…いやなんでもない。」
そう言って龍、俺の順番に彼女に握手をした。
握った瞬間彼女の手は温かくて優しくてすごく落ち着いた。
離した後も手の温かさが続いて心までもがぽかぽかした気分だった。
彼女はにこっと笑って龍の前の席に座った。
俺の前の席に座ればいいのに。
そう思った。