扉の奥に、あのふたりがいる。


抱き合っているんだ。


「…ああっ!」


あたしは走って出てった。

あの女の声に反応した、あたし。


魔法のような日々だった。


慧といて、まだちょっとだけなのに…あたしは慧を頼っていた。


魔法のような日々だったんだ。


誰かの腕の中で泣くことも。


誰かにしがみついたのも。


魔法は消えた。

消えたから、あたしはまたひとりになった。



ねぇ、あたし…もう飛べない。