「ただ、」

「ただ?」

「今日は少し……」

「えっ?」

薫がその言葉と靴の音に顔を上げると、橘が目の前に居る。

「許せませんでしたが」

そう言って、ベッドに手を着き、薫に覆い被さる形になる。

「何、言って……」

「私は貴方の執事です」

「お、おう」

「そして貴方をからかっていいのは私だけです」

「え!? ちょ……」

薫がその考えは可笑しくないか!? と言おうとすると、橘が薫の顎を持ち、耳の傍で囁く。

「お前、俺の事好きだろ」