『−…裏切ったら切腹、でしたっけ?』
『ああ…介錯は俺がしてやるよ。』
『やだなぁ…目が本気。』
『俺はいつでも本気だ。』
ねぇ土方さん。
アンタや近藤さんが居てくれなければ、俺はきっと此処に居ない。農民の子供でも、武士の魂を持つことが出来ると教えてくれたのは、紛れも無いアンタと近藤さんだ。
だから…
生きて
生きて
いつか…アンタを、笑わせてみせますよ。
『…ゴホッ』
ふと胸元が苦しくなり咳をした。同時に、掴まれていた襟元が緩められる。
『…具合が良くないんだ。早く帰るぞ。』
『ただの咳です。』
『良いから来い。』
胸に抱いた子猫ごと、屯所へと連れて行かれた。
土方さん、俺はいつまでアンタ達と戦えるだろう。
もし…
もし戦えなくなる日が来るのであれば、その時は
アンタの手で…−。
…なんて。
胸元に抱えた子猫の喉を撫でながら一度だけ振り返り、桜の木を目に焼き付けた。
−FIN,