「おかえりなさい。お待ちしてました」

結衣を連れて実家に帰ると、松井さんが出迎えてくれた。

あらかじめ連絡を入れておいたので、浴衣の準備もできているはずだ。


「こちらへどうぞ」と、客間へと案内する松井さんに付いて歩いていると、結衣が不安そうな顔で見上げてきた。


「浴衣、借りちゃって、本当に大丈夫ですか…?」

「ああ。全然問題ない」

浴衣はおふくろのものを勝手に借りることにした。

衣装部屋で長年眠っているくらいだ。浴衣も本望だろう。

それに、おふくろも結衣を溺愛しているので、むしろ喜ぶのが目に見える。


「きっと、結衣さんお似合いですよ」

客間で着付けの準備を始めながら、松井さんがにこやかに微笑んだ。


「当たり前だろ」

それに自慢気に返しながら、ソファにどっかり座った。


さぁ、早く着付けを始めてくれ。

わくわくしながら見つめていると、2人から冷たい視線を向けられた。

「……なんだよ」


何でそんな目で見てくる。