「え~?放って帰っちゃっていいの~?」

『……は?どういうことだ?』

「銀次の愛しの彼女なのに~?」

『ちょっと待て。……お前、今誰といる?』

「誰って、結衣ちゃん」

『………結衣?』

「うん、結衣ちゃん」


電話の向こうで銀次が固まっているのが分かる。しばらく無言が続いたあと、銀次の怒鳴り声が響き渡った。

『てめえぇっ!!ふざけんじゃねえぞ!!今すぐ結衣から離れろ!!』

その声は前に座る結衣ちゃんにも聞こえたみたいで、ピクピクと顔が引きつっている。


「お、落ち着け銀次!!偶然会って話してただけだ!!結衣ちゃん送ったらすぐ戻るから!!」

『送るだぁ!?結衣に近付くんじゃねえよ!!』

「い、いやでももう暗いし、危ないし、一人で帰すなんて紳士の俺にはでき……」

『今どこだっ!!』

「……えーっと…」

ブチ切れている銀次を抑えることなんてできず、店の場所を教えるとそのまま電話は切られた。