「アイツが?優しいの?」

「ええ」

そう言って、結衣ちゃんは今日初めて柔らかな笑顔を見せてくれた。


銀次が優しいなんて気持ち悪いけど、あの溺愛っぷりだ。実際そうなのだろうと想像できる。


「優しくて、楽しくて。一緒にいると、とても心強いんです」

「銀次は幸せ者だねぇ。こんな風に想ってくれるなんて」


たぶん、銀次が優しいのは結衣ちゃんだけだろう。他の女に対する態度はひどすぎるし。社内でも寄ってくる女に対しては銀次は容赦なく突き放す。


「銀次と早く結婚してあげれば?銀次、待ちわびてるでしょ?」

「え!?いや…そのっ!!こ、心の準備がまだ…」


またもや結衣ちゃんが困り始めたちょうどその時、噂をしていた銀次から電話がかかってきた。


『志銅、てめぇどこでサボってんだよ!さっさと帰ってこい!!』

「まぁまぁ!今ちょうど可愛い女の子に会っちゃってさ!お茶してんだよね~」

『ったくお前って奴は…。そんな女なんか放って早く帰ってこい』


電話先で銀次がイラついている。たぶん、俺が会社に帰らないと銀次も家に帰れない。途中でやりかけの仕事を放って会食に行ってしまったからだ。