その後、仲良くなった私たちは、もう一人の監視員のお兄さんを含めて4人で一緒に花火をしたり、夜通しで話したり…




「はい。あげる」

浜辺に座っていると、尚君が冷たいコーラを私のひざに置いた。

「わっ!冷たい!」

自動販売機がギンギンに冷やしたコーラは、私の熱を冷やしてくれる。

「あれ?ひーちゃん達は?」

「んー?あっちの方で遊んでる」

そうは言っても“あっちの方”がどこらへんかは曖昧だ。


「嘘。…二人きりにしてもらった。…なんて」


その一言で二人とも真っ赤になって、しゃべる言葉が見つからなかったんだ。

私は尚君の笑顔に一目ぼれして、仲良くなって話せば話すほどすごく惹かれてた。

だけど、恋愛は未だ初心者でこんな時に話す気の聞いた言葉なんて持ち合わせていない。


どうしようっと赤くなりながら、ギュっと着ていたワンピースを握り締めたとき、

「明日、帰るんだよね」

尚君がそう言って、沈黙を破った。


「えっ」

「明日の朝早くの電車で帰るって言ってたでしょ?」

「うっうん」

そうだ。


どんなに尚君に惹かれたって、所詮は一夏の憧れで終わるんだよね。


私は旅行でここに来ただけで、実際地元に帰れば学校だってある。

そんな当たり前のこと…忘れてた。


違う。忘れたかったのかも…。


「そんな泣きそうな顔しないで?…また会おうよ、ね?」

「あ、会う?」

「俺、お金ためて東京遊びにいくし。ってか元々俺の地元東京なんだ。今訳あってじーちゃん家に預かってもらってんだけどさ。」

「そうなの?」

ぽっと温まる心は、顔に笑顔となって表れる。


「みちかも、また来ればいいし!」

「うん!来る!絶対来る!」

泣きながら首を縦に振ったら、尚君がそっと私の手を握った。


「約束。」

「やく、そく…!」


突然の夏の出会いは、私の人生をキラキラと照らしてくれた。


“また会おう”


そんな小さな約束だけど、私はその約束を絶対大切にしようと決めたんだ。