そう微笑むと、ヒロの目が真剣な眼差しを私に向けた。
「ヒロ?」
その目があまりにも強くて、まるで目眩に襲われたみたいにクラクラした。
なんだろう、体が磁石みたいにヒロに触れようとしてる。
まるでこの人をずっと愛していて、やっと逢えたような感覚・・・。
でもそれは尚君の面影をヒロに重ねているだけだよね?
このままじゃダメだ。私の心は痛み過ぎたんだ。
「じゃあ、本当にありがとう」
カチっと急いでシートベルトをはずす。
「・・・気をつけろよ」
「ふふ、家すぐそこだから」
ガチャっと車のドアを開けるとヒヤっとした風邪が車内に入りこんだ。
「ヒロ、本当にありがとね。ヒロが声をかけてくれなかったら私きっと今笑えてなかった。」
本当に、本当に嬉しかった。
「また、会えるよね?」
「ふ、お前みたいなトロイ女はもうやだね」
ハンドルに寄り掛かりながら、ニヤリと笑う。
「な!」
「じゃあな、元気で」
そう言いながらこっちに腕を伸ばし、私の開けたドアを閉めた。
遠ざかる車。
その姿が、あの夏休みに私が乗った電車とかぶった。
尚君は私が乗る電車が遠ざかるのを見ながら何を思っていたんだろう。