待ち合わせは駅前に12時。


手帳に入っている、二人で夏に撮った写真を見る。


「来てくれるよね?」

相変わらず返って来ないメール。

でも、約束したんだ。尚君は来るに決まってる。


今は11時45分。

きっと小走りで走ってきて、半年振りの笑顔をくれるんだ。

5日間メールしてないくらい、全然どうってことないよね。


「ハァ、寒い…」

夏から半年たてば、季節は冬を迎えていた。

四季を楽しむ日本を私も大好きだけれど、こんな時ばかりは一年中暖かければいいのにと思ってしまう。


痛いほどの冷気は、指はもちろん、スカートから覗く薄いタイツに包まれた太ももを容赦なく冷やしていく。


「雪…?」

寒いわけだ。雪、とまでいかなくても、雪に近い雨がハラハラと振ってきていた。


時刻は12時30分。

「…嘘だぁ…」

携帯に、メールを知らせるお知らせもない。


まだだ。


まだ諦めちゃいけない。


尚君は絶対来るんだから。


「そうだよね?…尚君…」


まだ30分だもん。電車が遅れているのかもしれないし。


次々に待ち合わせて行くカップル。


キンキンと冷えていく身体。

泣きたくはないのに、浮かんでくる涙。

…信じたくない。

「いやだぁっ…」


半年待ったのに、最後はこれ?

なんで?どうして?


やっぱり会いたくなくなったのかな?


だから返信くれなかったのかな?



「バカ、みたいだよぉっ…」


小降りの雨でも、傘をささなければ少しずつ濡れていく。


セットした髪の毛も、新しく買ったコートも全部意味ない。


「バカだぁっ…」