ホームレスと合った目をケータイの時計を見てそらす。
7時三十四分。
――また怒られるな…。あのクソ親父に。――
ちはるの家の門限は六時。
それを過ぎてしまうと、過保護な父親の「高校生がこんな夜遅くまで出歩いてけしからん」という意味が要約された、ネチこい説教が待っている。
――もう嫌だ…。でも、何が嫌なのか全然わかんない――
しょうがなく家への道を歩きだす。
歩いている時もちはるの中の虚無は、広がっていくばかりである。
十五分もすると家についてしまった。玄関のドアを開けると、「クソ親父」が立っていて、早速説教が始まった。
「ちはる!こんな夜遅くまでどこ行ってたんだ!!」
一発目。ちはるは返事もせずに立っていた。
「来い!」
クソ親父はそう言い放つと踵を返し、居間へ入っていった。ちはるも後に続く。
相手してやらないと、これまた後がめんどくさい。