十一月。空気が乾燥し、草木は枯れている。冷たい風が、まるで槍のように体に突き刺さってくる、寒い日の夕方だった。
ちはるはホームレスで有名な公園にいた。一人ベンチに座り、そこでテントを張って暮らしているホームレス達をまじまじと眺めていた。
別にホームレスが好きな訳ではなかったし、この公園の居心地もちはるにとっては最悪だった。
この公園のベンチでホームレスを眺めて何時間くらい経っただろうか。
さすがにホームレス達もちはるのことをちらちらと横目で見始める。
――あたし…、一体こんな所で何やってるんだ…。でも、何かしたいことがある訳じゃないし…。
ホームレスはいいよなあ。何もしなくたっていいんだし…。――
冬の風は、ちはるの体が冷えきっていくのを気にも留めていない。
ふと自分の心に黒くて、もわもわした、煙のような虚無が沸き上がってくるのを感じたちはるは、ベンチを離れ、公園を出た。
公園の出口にいたオヤジホームレスと目が合う。
コンビニが廃棄したと推測される弁当を六つくらい抱え、ちはるのことを変な目で見ていた。
――うわッ!!あれ食べんの!?ホームレスって…――