溢れる涙がとまらない

僕はかまわず号泣した

まわりで遊ぶ子供たちや
その母親の
いぶかしげな目なんか
気にならない

大切に素直に
表現したかった
この日記は
下書きのまま
保存しておいたに
ちがいない

その日のうちに
したためたこの日記に
続きを書こうとしたに
ちがいない

翌日の婚約者との
心の通じあいの
その後にもっとも
大切なことを
書きたかったに
ちがいない

あんなことさえなければ・・


この未送信の日記を
わざわざ僕に
送ってくれた婚約者には
感謝と無念と嫉妬の
入り交じっている
複雑な心境も
あっただろう

だけど美雨の
ピュアで透明な心を
文面から感じ取って
くれたはずだ

美雨と僕の間には
なんのやましい
気持ちもないことを

涙に霞む紫陽花から
雫が少しずつ
消えかかってきた頃に
僕の頬に何かが
触れるのを感じた

それは柔らかな風の
しわざだった