普段通勤のため
使う道の途中に
小さな公園があった

僕はその公園の
片隅に慎ましく咲く
「美雨」を求めて
走っていた

梅雨も明け
真夏の日差しが
容赦なく照りつける中
僕は祈った

まだ枯れて
いませんようにと

あの花は
美雨そのもの
君の僕への想いを
間接的にでも
伝えてくれた
たったひとつの証

いくら歳を
重ねた男でも
人生のうち何度かは
手をつけられないほど
感傷的になっても
許される時が
あるとしたら
今この瞬間しかない

深い真っ暗な海溝の底に
静かにゆっくりと
沈んでいくような哀しみ

そしてこの世の
誰一人として
僕を海底から
引きずりあげて
くれることはない現実

誰にも頼れない
頼れるのは・・・